「1999年7の月」も過ぎて、8月11日のグランドクロスも終了。いまのところ世界はそれほど大変な状態にはなっていないようです。ノストラダムス解釈の人たちに言わせますと9月から10月頃までは、予言的中の範囲に入るようですので、まだ予断を許しませんね。 もちろん、環境破壊、地域紛争の増大などなど大災厄へのカウントダウンは着実に進んでいるようです。まあ、私たち自身にしても「少しずつ死んでいる」わけですから、時間が進行するということは、すなわち少しずつ終わりに近づいていることを意味しているわけです。 さて、こうした長期的な予言ではなく、もうすこし短期的な予言をしておきましょう。 日本の歴史を振り返りますと、おおよそ60年おきに大事件が起きて時代が変わっているように見えます。それは大地震であったり、戦争であったりでした。60年は干支が一巡りして再びスタートする周期です。もうすこし現実的な視点から見ますと人間の一世代がまわる周期だといえるでしょう。 「喉元過ぎれば熱さ忘れる」という諺があります。人間は愚かな生き物で過去の失敗をわりと簡単に忘れてしまいます。というか、忘れることによって精神の平衡を保っているらしく、「忘れる」というのは重要な精神的な機能なんだそうです。これに付け加えて先に述べた60年周期が加わりますと、もうこれは確実に過去の失敗をすっぱり忘れてしまうことになるわけです。なぜなら、失敗体験を積んだ人たちがこの世からオサラバしているわけですから。 私たちの祖父母や父母の世代は、おおよそ60年前の戦争でずいぶんひどい目に遭いました。人生の前半でひどい目に遭っているわけです。私たちの世代(現在50歳以降)は、それこそ「戦争を知らない」世代でして、戦後の焼け跡からたくましく発展する日本の中でけっこうそれなりに楽しく生きてきたわけです。だから私たちの世代は、人生の後半でひどい目に遭うことになるだろう と、予言するわけです。私の個人的意見としてはひどい目には遭いたくないなぁ、と思うわけですが(さっさとこの世からオサラバするのも嫌ですけど)。(第一の予言) 今年に入って「改正風俗営業法」「情報公開法」「中央省庁改革法 / 地方分権法」「国旗・国歌法」「組織犯罪対策三法(通信傍受法)」「住民基本台帳法改正(国民総背番号制)」と次々に法律が通っていきます。「情報公開法」と「中央省庁改革法 / 地方分権法」を除きますと、どうも60年前と似たような傾向があるように思います。大正デモクラシーから昭和ファシズムまでわずか10年。しかるべき地位にある人がその気になれば、世の中を塗り替えてしまうのも、それほど困難な作業ではありません。 日本国憲法には「9条」と「自衛隊の存在」という大きな傷があるのですが、これに「21条」と「通信傍受法」という傷が加わってしまうわけで、そろそろ憲法を書き換えないと、小学生や中学生に憲法について教えるときに大変困る状態になりつつあります。国の基(もとい)がこんな状態ですから、順法意識が育つわけがありません。だから「そろそろ憲法の書き換えをしましょう」という話になるのは当然です。私は、憲法改正について本気で検討し始めなければならないと考えています。 日本では二つの対立する主張がある場合、折衷して「落としどころ」に落とすのが交渉上の上策とされますが、この「なんでも折衷」の態度は、無定見だとも言えます。一方の主張が突出している場合、そちらに重心が移ってしまうからです。憲法改正案を検討する中で、それまで「なあなあ」「落としどころへ」で済ませてきた曖昧な日本は、21世紀においていかなる価値を国是とするのか、どういった国家になるのかを妥協なく選択しなければならなくなるだろうと思います。これは良いことですし、必要なことだと考えます。もし、この時点に至っても「なあなあ」「落としどころへ」なんていう態度を日本がとるなら、まあ21世紀の半ばには日本は解体してるでしょう。(第二の予言) 現在の野党(革新政党)の人たちは「護憲・憲法改正反対」を主張し、与党(保守政党)の人たちは「改憲」を主張しています。不思議なことに、革新政党が現状維持を主張し、保守の人が現在の憲法を60年前のものに戻そうとしているように見えます。すなわち、21世紀の日本のあり方に対するビジョンを提示している人たちがいないのです。やっぱりオジイサン達に任せているとこういうことになるのですな。 では、21世紀のビジョンを指し示す若い才能たちはどこにいるのでしょう?彼らは、年寄りの集う国会ではなく もう21世紀のビジョンの中にいます。現代のフロンティアであるサイバースペースを旅してみてください。もう次世代の社会のあり方、価値のあり方を示す予兆に溢れているように私は思います。私たちの進むべき方向を示す勢力は、ある日突然サイバースペースから、リアルワールドに姿をあらわすでしょう。(第三の予言) だから、あまりオジイサン達の価値観で日本の(というと変だけど)サイバースペースに規制や縛りを入れることは、好ましくないと思うわけです。まして、サイバースペースを国単位で囲い込んで国家統制の下に置こうとするような間抜けなことだけは絶対に止めていただきたいと思うわけです。自分の地位を守るために子供たちを呑み込みつづけたクロノスの愚挙を繰り返してはなりません。 え?「インターネットはエロ情報・危険情報だらけだ」ですって?それは、あなたがそういう所ばかり探しているからでしょう。そんなくだらないことばかり探していないで、光の速度で進む世界の先端に追いついてみたらいかがですか?きっと星々が美しい虹の環(リング)を描いていると思いますよ。
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白田 秀彰 (Shirata Hideaki) 法政大学 社会学部 助教授 (Assistant Professor of Hosei Univ. Faculty of Social Sciences) 法政大学 多摩キャンパス 社会学部棟 917号室 (内線 2450) e-mail: shirata1992@mercury.ne.jp |