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無教養音楽批評

* ジャズ編 *

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* Waltz for Debby, Bill Evans Trio, (Bill Evans, Scott LaFaro, Paul Motian, Riverside, OJCCD-2102).
    はい。名盤です。静かでリリカルなジャズがお好みならば、これでしょう。でも、メジャーすぎてマニアに「これが好きです」とは言いにくいよね。ちなみにオーディオマニアは、演奏そのものもそうだけど、背景に入っているヴィレッジ・ヴァンガードの背景雑音をいかに「それらしく」再生できるかが重要な問題。グラスがぶつかる音や笑い声が隣の部屋から聞こえてくるように再生できれば合格。



* Swing Me an Old Song, Julie London (MAR 040, Limited Edition).
    ハスキーヴォイスのお色気むんむんお姉さんジュリーロンドンです。キンキンした高音の歌姫が受けまくるこの国では、絶対にメジャーにはなれなかったでしょう。良いんですけど、録音古すぎ。残念無念。雰囲気は戦後占領期のGI向けクラブって感じです。そういう雰囲気を出したい時は、よいかもね。

    ついでに言っとくと、「新世紀エヴァンゲリオン」のお終いの曲「Fly Me to the Moon」が入っています。オリジナルは「濃い」ので、エヴァンゲリオンの歌手のスイートヴォイスになれた人には、全く別の曲に聞こえるかもね。私は「Wives and Lovers」が一番好きです。



* 12 Standards, (531 660-2).
    スウェーデン・ポップス、すなわちカーディガンズ系の大流行が昨年あったけど、その勢いで出た、スウェーデンポップスの有名どころ12人がジャズのスタンダードを一曲ずつ唄ったというコンピレーション。これはいいですよ。私は好きです。カーディガンズのニーナ嬢がボサノヴァの名曲「Desafinado」を唄ってますけど、いー感じです。でも、カーディガンズのライブに行ってきた人にきいたら、カーディガンズってスゲー下手らしいですね。すると、トランポリンレーベルの録音技師がうまいのか。私のもう一つのお気に入りは文豪トルストイの孫娘 ヴィクトリア・トルストイが唄う「Invitation」。かっちょいいです。これに気を良くしてヴィクトリアのCDを探しにタワーに行ったら、1枚しかありませんでした。さびしー。



* Groovy, Red Garland Trio (Red Garland, Paul Chambers, Art Taylor, Prestige/VDJ-1532).
    Go RED Go!な、ジャケット。これは吉祥寺のジャズ・ライブハウス「サムタイム」が内装にパクリました。「Will You Still be Mine?」がスピーディでかっちょいー。こういう曲が他にあったら紹介してくれー。その次の「Willow Weep for Me」は不協和音のピアノの再生が厳しいです。悪いステレオシステムだと、変な響きが乗ります。私の前のシステムでは歪んでました。



* Cool Struttin, Sonny Clark (Sonny Clark, Art Farmer, Jackie McLean, Paul Chambers, Philly Joe Jones, Blue Note CDP 7 46513 2).
    私の脳味噌では、このCDは「ルパン三世」の世界。それもお子様向けに毒をぬかれたやつではなく、もう少しダークな一番最初の「ルパン」って感じ。さすが名盤だけあって全曲いけますけど、私の好みはオリジナルのLPには収録されてなかった「Royal Flush」と「Lover」。CD時代の恩恵だな。



* 5 By 5, Thelonius Monk, (Thelonius Monk, Thad Jones, Charlie Rouse, Sam Jones, Art Taylor).
    このCDは探し出して買ったやつ。吉祥寺サムタイムのライブ演奏で素晴らしい曲をやっていたので、「この曲何てーの?」とレジのお姉さんにきいてメモって帰って探したのだ。私にこのCDを買わせた名曲は「Ask Me Now」。でも、私が感動した弓弾きのベース演奏は、その日ライブをやってたベーシストのアレンジだったみたいで、この演奏には入ってませんでした。しかし、いくらボーナストラックだと言っても、「Played Twice」を3回も繰り返し収録することはないじゃないの?



* Moon Beams, Bill Evans Trio, (Bill Evans, Chuck Israels, Paul Motian).
    ひっくりかえったお姉さんの謎の微笑みジャケットが特徴。曲の傾向はまえの「Waltz for Debby」と同じだけど、こちらはどうも印象に残らないのは、ラファロが亡くなっちゃってビル・エヴァンスが意気消沈していた時期から、ようやく立ち直った時期のやつだからか?わたしのところでは、「Waltz for Debby」のあとに掛けることが多いです。そのまま寝ちゃう。



* Saxophone Colossus, Sonny Rollins (Sonny Rollins, Tommy Flanagan, Dug Watkins, Max Roach).
    ド名盤。これまでのラインナップをみると、ジャズ初心者が名盤からぼちぼち聴いている様子が伝わってくるでしょ。明るく元気よいジャズの代表みたいなこのCDだけど、聞く雰囲気が問題。夜聴くには元気良すぎ。昼聴くにはダークすぎってなことで、やっぱりワイワイしたジャズ・クラブでみんなで聴くのがいいのだろうね。



* Portrait in Jazz, Bill Evans Trio (Bill Evans, Scott LaFaro, Paul Motian).
    ピッチリキメキメのビルの写真が特徴のこれまたド名盤。私はとりあえずこれから聞きはじめました。「そうだ、そうだ」という人も多いだろう。入っている曲もスタンダード中心だからハズしがない。まさに初心者のための名盤でしょう。



* Bill Evans Trio with Symphony Orchestra, (Bill Evans, Chuck Israel, Larry Buner).
    これは、イカもの。ビル・エヴァンスのファンでも話題に上ることの少ないやつ...。なぜこういうものを買ったのか?それはフォーレの「パヴァーヌ」が入っているからだ!! 私は結構いけているのではないかと思うのだが、ジャズファンには「オーケストラだってぇ?ヘッ」と馬鹿にされ、クラシックファンには「ジャズぅ?」と蔑まれるという中途半端な位置づけが最大の問題なのでしょう。70年代くらいのアメリカの刑事ものドラマの背景音楽っぽい感じです。あ、刑事コロンボの感じっていえば、私にはピンとくる。



* Ray Bryant Plays, Ray Bryant Trio (Ray Bryant, Tommy Bryant, Oliver Jackson).
    端正なスタンダード集って感じで曖聴してました。後で知ったのですが、隠れた名盤だったらしいですね。全部安心してお薦めできます。



* DJANGO, The Modern Jazz Qualtet (John Lewis, Milt Jackson, Percy Heath, Kenny Clarke).
    それはそれは有名なMJQのDjango。これまたド名盤。で、聴いてびっくり端正ではないですか。熱いジャズかと思っていたら、クールです。バイブの涼しい響きがいい感じなのですが、残念なことにモノラル録音なんですねぇ。夏の夕暮れにおすすめ。



* Explorations, Bill Evans Trio, (Bill Evans, Scott LaFaro, Paul Motian).
    相変わらず端正なビルのピアノなんですけど、どーも淋しさが漂うのはなぜ?



* Autumn, George Winston.
    秋口に、なーんとなく買った、という人も多いだろうと思われる、ウィンダム・ヒル・レーベルの出世頭(?)のジョージ。ド名盤だから安心して聴いてられるのですが、うちのシステムだとピアノが金属的過ぎるんですよ。なんかキンキンしていて気になります。あなたのところのステレオでもそうですか?



* Time Out, The Dave Brubeck Quartet, (Dave Brubeck, Paul Desmond, Eugene Wright, Joe Morello).
    あるオーディオ評論家のところにお邪魔したとき、システムの試聴用として使われた曲(Blue Rondo a La Turk)があまりにカッコよかったので、タイトル等をメモして帰って買ったもの。超名盤らしいですね。すごーくお勧めです。とにかくクール!! くだらないロックが蔓延する時代にうんざりしている若い人にぜひ聞いてもらいたいです。



* Porgy and Bess, George Gershwin, (Ella Fitzgerald and Louis Armstrong).
    何でも今年は、Geroge Gershwinが生れてか亡くなってか100年らしいじゃないですか。で、その特集記事のなかでこの「ポーギーとベス」のことを知りました。そしたら中古屋に出てたので買いました。ジャズで彩られたオペラというような位置づけと理解すれば良いのでしょうか。有名な曲Summer Timeが、こういう文脈で歌われていたということを初めて知りました。哀愁漂う中にも素朴な愛情が感じられる作品です。



* Ray Bryant Trio, (Ray Bryant, Ike Isaacs, Specs Wright).
    さて、私が最初に買ったJAZZのCDだったRay Bryantの私にとっての2枚目のCD。端正にきっちりと曲をこなした佳作です。この人はいわゆる天才というものではないらしいのですが、落ち着いたメロディ中心の演奏が私の好みです。



* Sonny Clark Trio, (Sonny Clark, Paul Chambers, Philly Joe Jones).
    これ強くお勧め。かっこいいぞ。1曲目はちょっと単調な感じがするのでイケませんが、2曲目 "I didn't know what time it was" がチョーかっこいいです。その他の曲もイケてます。CD一枚があっという間に終わったように感じてしまいます。実際収録時間も短いみたいだけど。



* Cool and Sparkling, (Paul Smith, Julius Kinsler, Ronny Lang, Tony Rizzi, Sam Cheifitz, Irving Cottler).
    オーディオ仲間のひとからクールなCDだぞ、と教えてもらって買いました。ジャケットは50年代風で「果てしなく明るかった時代のアメリカ」そのものみたいです。とっても明るくさわやかなJAZZです。JAZZというと薄暗くて煙草がたちこめたところで聴く音楽という印象が、正直いうとあったのですが、このような真昼に風通しの良いへやで聞けるJAZZがあったというのは、結構驚きました。すこしこの手のCDを集めようと思っています。



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to Critique 白田 秀彰 (Shirata Hideaki)
法政大学 社会学部 助教授
(Assistant Professor of Hosei Univ. Faculty of Social Sciences)
法政大学 多摩キャンパス 社会学部棟 917号室 (内線 2450)
e-mail: shirata1992@mercury.ne.jp