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無教養音楽批評

* クラシック編その1 *

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* 村治佳織「Green Sleeves」VICC-159.
    なんかギター自慢のかわいらしい娘さんがこちらをにらんでいる、というジャケットが特徴。Hi-Fiマニアの私は20bit K2録音につられて買いました。春の午後、テキトーにBGMにするには良いけど、真剣に聞くという程のものでもない。代表曲グリーンスリーブスの冒頭に入る、木々のざわめきと小鳥のさえずりがオーディオチェックにもってこい(笑)。ここだけをリピートして環境CDとして使う手もあり。


* 坂本龍一「1996」FLCG-3020.
    「なんでこれがクラシックなんだ!!」と怒られてもしょうがないが、私の無教養な脳味噌では、こいつはちゃんとクラシックの範疇に入っている。かつて龍一君の大ファンだった(私はほんとに彼が教授だと信じていた)私としては、前半くらいまでの曲はなじみあったが、後半に至ると、どの曲がどれやら判然としなくなる。最近の龍一君は「スイート・リベンジ」のジャケットをみれば分かるように、何だかよくわからない人になってしまった。



* W. A. Mozart, Symphony No.35 HAFFNER, No.36 LINZER / W.P.O., James Levine, POCG-1249.
    なぜかアフロなへアースタイルの指揮者のおじさんがにやけてこちらを見つめているという謎のジャケットが特徴。中古屋で購入したが、このジャケットが理由で売り払われた可能性が高い。どっかの貴族が、結婚式やらのハクつけのためにモーツアルトに依頼した曲らしい(ほんとか?)。モーツアルト先生が「ふんふんふーん」とかいいながら、(おそらく)あっという間に書いて、礼金を頂いただろう作品。少し眠くなった昼間に聞くと勢いがついて良い。



* J. S. Bach, Arias / Kathleen Battle and Itzhak Perlman, 429-737-2.
    タイトルどおり、パールマンのいつもの笑顔とバトル姉さんのツーショットが特徴。こいつはいいぞ。軽やかなバイオリンに乗ったソプラノの伸びやかさがいいです。一年を通じて朝に聞くのに良いと思います。ただ何歌っているのかさっぱりわからないのが悲しいね。屋敷君おしえてよ。



* J. S. Bach, Adagio Bach, POCG-3516.
    いろいろと批判もあるような「アダージョ」シリーズだが、とりあえず「この一枚からバッハに入りました」というと、わたしのクラシックの無教養さが滲み出るのでは。朝にBGMとして鳴らし続けるのにこれほど好適な一枚はない。6曲めあたりのパイプオルガン曲末尾で、録音技師が床に何か落とす音が聞こえるのが愛敬。



* Maria Callas, Opera Arias, CDC 7 49005 2.
    バトル姉さんによってソプラノについて興味の沸いた私は、やはり、超有名どころのカラスを聞かねば、ということでテキトーに買いました。理由は、この版だけがとりあえずステレオだったから(笑)。当然、後期の録音でありますので、あるいは絶頂期をすぎたころの録音かもね。コワイです。気合を入れなければ聞けません。ライナーを読むと、悲惨な歌が多いですねぇ。恋人が死んだとか捨てられたとか。これまた何言っているのかさっぱりわからないのが救いなのかも。私にはカラスはいけませんでした(笑)。



* Albinoni et al., Barocque Concert, POCG-7027.
    ありがちなバロック名曲集でございます。朝にぴったり。イケますね。私はヘンデルの「シバ女王の入城」というのがきらびやかで好みです。こういうサワヤカな曲を他にもご存じの方、教えて下さい。録音もかなり良いのでHi-Fiマニアにもおすすめ。小編成のオーケストラなので各楽器の味わいもよいです。



* G. U. Faure', Piano Music / Pascal Roge', DECCA 425 606-2.
    フォーレはいいぞぉ。現代の評判は良くないみたいだけど、午後にBGMにするにはほんとによろしい。そういう素敵なフォーレのピアノ曲集。これまた素晴らしい。こちらは秋の夜に窓を開けて聞きたい。月の光を乱反射する水晶が空にまき散らされているようだ。ロジェのピアノもスピーディーでこれまたよろしい。ちなみにロジェは、自転車サークルの荒木先輩(今は農林中金にお勤めだと聞いているが)に似ていると思うのだがいかがだろうか。



* G. U. Faure', L'oeuvre d'orchestre, Vol.I and Vol.II/ Michel Plasson, CDC 7479392.
    私が強く推薦するフォーレのオーケストラ作品集。フォーレは「ペレアスとメリサンド」とか「レクイエム」ぐらいしか著名でないみたいだけど、全ての曲が上品で聞きやすくBGMにもってこい。あ、レクイエムだけはイケません。荘厳すぎて辛くなります。もし、分かりやすさとBGMにもってこい、という点で彼の評価が低いならば、そんなムズカシイ人たちの評価は無教養な私達は無視すべきだとおもいます。ちなみに、プラッソンという指揮者は、私に天才バカボンのイヤミを思い起こさせる風貌をしていました。



* M. Ravel and C. A. Debussy, String Quartets / Quatuor Ysaye, POCL-5090.
    デジタル録音の弦楽四重奏という基準だけで選んだオーディオチェックCD(笑)。けど、いいです。イケます。録音がいいのに加えて、ドビュッシーの四重奏がここまでイケてたとは、予想していませんでした。これで引っ掛かってドビュッシーの管弦楽曲を買ってハズしました(笑)。ドビュッシーはピアノに限ります。



* R. Wagner, Overtures and Preludes / Georg Solti, FOOL-23014.
    ド名曲。音量を上げられる環境にあるならば、買いです。すげえ迫力と甘美な旋律が良いです。でも、ある程度の音量がないと、淋しくなります。タンホイザーで勢いをつけてマイスタージンガーで高揚するというのがいいのでは。これを聞いて(かどうかは知らないが)50年くらい前「ドイツ民族は世界に冠たる...」とか夢想したオジサンがいたり、それより前に、素敵な役立たずのお城をバイエルンに3つも作ったバカ殿様がいたりしたのも肯けるような気がする。



* F. Kreisler, Album / Joshua Bell, DECCA 444 409-2.
    とってもダンディな少年愛っぽい素敵なおじさんクライスラーの曲を美少年(よくわからんが)ベルが奏でるという甘美なCD(笑)。単にデジタル録音のクライスラーのアルバムが欲しくて買ったのだが、このベル君を美少年バイオリニストとして売りこもうという戦略がみえみえでイヤミです。技巧についてはよくわからないけど、「やおい」の人はぜひともそろえるべき一枚でしょう。BGMとしていつでも楽しめます。



* G. F. Handel, Water Music and Royal Fireworks Music / Karl Munchienger, POCL-5033.
    バロックづいた時に、やはりそろえるべきだろうということでデジタル録音だというだけで買いました(笑)。うーん。バロックといってもバッハの精神性・至高性とはちょいと違ってますね。なんか、単に古めかしいだけだという感じ。政治をやる気のないジョージ王様の機嫌をとるために作ったという根本動機からして気合が抜けているからだろうか?



* G. Holst, The Planets / C.S.O., James Levine, POCG-1063.
    ワグナーを聞いて、勢いのある音楽をもう一つ欲しいと思った私は、構想のバカでかさを買って「惑星」をとりあえず買ってみました。宇宙戦艦ヤマトの「あーぁー」とか女の人が歌う宇宙空間の音楽のもとになったとかいわれているそうです。とくに松本零士が好きな曲とか。これまた音量を上げられるなら、いいかもしれませんが、普通のご家庭で聞くと迷惑がられるかもね。私にはイケませんでた。



* 矢部達哉「Sotto Voce」SRCR1616.
    これまたHi-Fiマニアの私がSBM録音の威力を聞きたくて買ったやつです。もちろん、演奏曲目もかなりいいです。ドビュッシーのソナタはイケませんが。演奏も情緒的で、秋の夜に小音量で「ささやくように」聞くのがぴったりかもしれません。

    でもね。いくら録音技術が良くても、録音方針が馬鹿ならどうしようもありません。なんでこんなにルームエコーを強調して、バイオリンもピアノも一緒くたにするような録音をするのでしょうか?前のベル君の CDの方がよほど良い録音をしています。せっかく私と同い歳の矢部君が頑張っているのにぶち壊しです。もし、ラジカセを意識したBGM的な音作りをしているならば、余計なお世話だといいたいです。50年代や60年代のジャズの録音を見習ってほしいものです。



* A. Vivaldi, Le Quattro Stagioni / I Musici, PHCP-1615.
    小山田君の69/96(だったっけ)にも収録されているというド名曲(笑)。ちなみに私は小山田派です。小沢君が「子猫ちゃーん」と歌っているのを見て、ついていけないと思いました。さて、この「四季」に関してはなにもいうことはないでしょう。中学校の音楽の時間を思い出して下さい。



* A La Carte / Itzhak Perlman, TOCE-8730.
    いつも団子のような笑顔のパールマン。彼の笑顔は一種類しかないのかもしれない。今度はバイオリン協奏曲です。録音もしっかりして、演奏も確かなのですが、演奏曲目がイケません。前3曲まではいいのですが、やたら大げさなチゴイネルワイゼンで「うひゃー」と思ったら立て続けにロシアの匂いぷんぷんの曲が続き、辛くなります。私はロシア系統がダメなんですよ。で、最後の3曲でクライスラーになってホッとすると。こういうわけで私はクライスラー曲集を買いに行ったのです。



* J. S. Bach, The Cello Suites / Yo-Yo Ma, SONY 60DC531.
    バッハの「アダージョ」を聞いて、無伴奏チェロが実によろしいということに気がつきました。デジタル録音という基準で探して、ビルスマとヨーヨーマのそれを発見しました。どっちにするか悩んで、なんか勢いが良さそうという基準でヨーヨーマにしました。聞いてみたら、超技巧で、勢いが良すぎです。ビルスマの方にしておけばよかったかも。ところで、ヨーヨーマって銀行に勤めていそうな風貌ですね。



* J.S. Bach, Suites for Orchestra No.2, No.3 / B.P.O., H. v. Karayan, POGC-3432.
    カラヤンの「アダージョ」を聞いて、「G線上のアリア」が実によろしいということに気が付きました。そこで、他の部分も聞いてみたいということで、やっぱりカラヤンのやつをということで買いました。録音が旧いですし、どうもキレが良くありません。演奏はゆーったりゆーったりしてます。カラヤンのバッハは評判が良くないみたいですが、やっぱりそうかもしれないと思われました。



* 坂本龍一 + ダンスリー 「The End of Asia」 COCO-7077.
    龍一君が絡んでいるけど、全部中世・ルネサンス楽器の演奏。龍一君の曲もやっているけど、メインは中世・ルネサンス期の曲。これはいいぞぉ。テクノやってたころの龍一君の曲が旧い楽器で演奏されると、不思議な味わいがでる。もしかすると、テクノの曲は古典楽器と相性がいいのかもしれない。もちろん、昔の西洋の曲も秋の遅い午後の枯れた味わいがあってとってもよい。



* F. Schubert, Impromptus D 899 and D 935 / Anderi Gavrilov, 435 788-2.
    中古屋で発見して、ジャケットの写真のお兄さんが「買っとくれー」と訴えかけているように見えたので買いました。額がかなり後退しており、ヒゲの剃りあとが青々しいこのお兄さんは、きっと今頃は...とおもわせます。演奏もエネルギッシュでよいのですが、どうもシューベルトのこの曲が私にはイケないみたいで、あんまり印象がありません。それ故に中古屋送りになったのかも。



* Tchaikovsky and Mendelssohn, Violin Conchertos / Kyung Wha Chung, M.S.O., C. Dutoit, POCL-5013.
    寝間着のような白いドレスを着た、いかにもキツそうなお姉さんがバイオリンを握り締めてフテくされているというジャケットが特徴。曲はいずれもチャイコン、メンコンと短縮されるほどのド名曲。でも、チャイコフスキには悪いけど、メンコンしか聞きません。なーんかダメなんですよ、ロシアっぽいのが。メンコンはうちの私の小さい頃、親父が音の悪いラジカセで聞いていたので、懐かしい気持ちになります。なぜか、第二楽章で手塚治虫の鉄腕アトムのマンガを思い出すのは一体どういう記憶の関連なのか未だにわからない。



* W. A. Mozart, Eine Kleine Nachtmusik et al. / Academy of St. Martin-in-the Field's Chamber Ensemble, 421 269-2.
    なんか、怪しげなワゴンセールで1000円以下で買ったやつだとおもう。フィリップスの版だし、DDDだから、音もそれほどひどいものではないとおもう。演奏もまあ聞ける。でもね。なんで最後の曲が「A Musical Joke」なの?この曲があるばっかりに、午後のBGMとしての使用がどうもウマくない。勢いよく、軽やかに始まって、「ぶっひゃらら、ひゃっひゃ」という不協和音で〆られるのでは、ちょっと困る。



* G. Gershwin, Rhapsody in Blue et al. / Labeque Sisters, C.O., FOOL-23075.
    このCDを聞いて思うことは、アメリカ文化 = ディズニー的世界ということなんだねえ。ガーシュウィンの曲はどれを聞いてもディズニーのアニメが思い浮かぶ。ほんとのところは、ディズニーの方が、「健全なアメリカ」のイメージを利用するためにガーシュウィンの雰囲気をパクったのだろうけどね。メディアの力で、今の私にはガーシュウィンがディズニーのお抱え楽士だったようにさえ思える。ディズニーといえば、全世界の子供および子供類似の大人を洗脳して、金をまき上げているくせに、「子供に夢を与える」などと恥ずかしげもなくいうところが嫌いです。ディズニー社がもの凄く著作権にうるさくて、幼稚園の子供が書いた「ミッキーマウス(R)」の絵にまで著作権使用料を請求しているという話はウソ(笑)。



* J. Brahms, Symphonie No.1 / B.P.O., H. v. Karajan, 423141-2.
    紫色の背景を水色の「ビームサーベル」が貫いているように見えるジャケットが特徴。いやあ、なかなか良いのですが、ティンパニの連打や低域のボリュームの大きさとか、ダイナミックレンジの広さとか、家庭で他の人に迷惑かけずに聞きにくい曲です。私は第四楽章ばかり聞いていますが。



* R. Wagner, The Ring Highlights / N.Y.P.O., Mehta, SONY 22DC 5503.
    ワグナーなら、「ニーベルングの指輪」で、「指輪」といえば「ワルキューレの騎行」でしょう。教養のない私はそれしか知らないの。「地獄の黙示録」のテーマといった方が通りがいいよな。話はそれるが、「ウィリアムテル序曲」というよりも「ひょうきん族」のテーマといった方が通りが良かった時代もあった。さて、このCDはあんまりイケませんでした。何故かはわからないけど。また話はそれるが、設定が大嫌いで見なかった「超時空要塞マクロス」には「バルキリー」というロボット戦闘機が出てました。私は、これだけにはひどく感心していました。ちゃんと変形するから。で、この「バルキリー」の綴りはおそらく「Valkyr」で、これって「ワルキューレ」のことだと知ったのは、つい最近。



* C. A. Debussy, Images, Nocturnes / M.S.O., Dutoit, F25L-29171.
    前にでてきたドビュッシーの弦楽四重奏がイケていたので、彼の管弦楽曲ならどんなに素晴らしいだろうと勝手に思いこんで買ってきたのがこれです。ハズレです。フォーレの管弦楽曲を受けのいい印象派の絵画に例えるとすると、ドビュッシーの管弦楽曲は後期印象派で、もうそろそろ「お芸術」の世界にはいりまーす、という感じになってしまっている。はっきりいって高尚すぎているのか、捉えどころなく、おもしろくない。ちょっとガーシュウィンをパクったのか(あるいはパクられたのか)と思われるフレーズも聞こえてくるが、仕上げのよさではガーシュウィンの方がいいぞ。



* G. Faure' Requiem et al. / M.S.O., Dutoit, DECCA 421 440-2.
    私は、中学のころに、坂本龍一のサウンドストリートという FM番組にはまっていました。とくに大好きだったのがデモ・テープ特集という素人投稿コーナーです。(私も投稿したことがあります)そこで、シンセサイザーで「フォーレのパヴァーヌ」をやった人が投稿していました。私はそれを聞いて、なんとフォーレとは素晴らしい作曲家かと、思ったわけです。で、この「パヴァーヌ」が欲しくてこのCDを買いました。ところが、儲けものだったのが、「ペリアスとメリサンド」に入っている「シシリエンヌ」という曲が、随分昔に王監督が「カロリーメイト」を食べるというCMに使われていた曲だったことです。私はこのCMの背景の憂いを帯びた淋しげな曲に強く惹かれたわけですが、誰の何ていう曲かぜんぜんわからなかったのです。「パヴァーヌ」「シシリエンヌ」はプラッソンの盤にも入っていますが、録音・演奏はこっちの方が数段上です。



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to Critique 白田 秀彰 (Shirata Hideaki)
法政大学 社会学部 助教授
(Assistant Professor of Hosei Univ. Faculty of Social Sciences)
法政大学 多摩キャンパス 社会学部棟 917号室 (内線 2450)
e-mail: shirata1992@mercury.ne.jp